開催要項

名称 第21回技術講演会
開催日時 2024年7月30日(火)
【講演会】9:20 ~ 17:20(受付開始 8:30~)
【交流会】17:40~
2024年7月31日(水)
【講演会】9:30 ~ 17:00(受付開始 9:00~)
主催 新製剤技術とエンジニアリングを考える会
会場 京都国際会館 アネックスホール
〒606-0001 京都市左京区岩倉大鷺町422番地
https://www.icckyoto.or.jp/
京都国際会館アクセス
協賛 (公社)日本薬学会 (公社)日本薬剤学会 (一社)日本粉体工業技術協会
(一社)粉体工学会 日本DDS学会 (一社)製剤機械技術学会 ISPE日本本部
(一社)日本PDA製薬学会

ご挨拶

 長かったコロナ禍もようやく落ち着きを見せ始めましたが、その間も技術の進化は立ち止まることなく、近年ではDXをはじめとする新しい技術の発展に伴い、医療・製薬業界も大きな変革期を迎えております。
 従来の製剤開発の枠を超え、AIやIoTなどの技術を活用した革新的な新製剤技術が次々と研究されており、医薬品開発のスピードと効率化ばかりでなく、他産業にも大きな変化が及んでいます。
 このような時代の変化に対応していくため、「新製剤技術とエンジニアリングを考える会」では、規制当局を始め、第一線で活躍する14名の著名な先生方を世界中から講演者としてお招きし、最新の技術動向に関する知見と情報を共有し、議論を交わす場として「第21回技術講演会」を開催したいと考えております。
 今回の講演会では、従来にも増して時代の変化を意識したご講演からなるプログラムを構築しています。
 規制側としては、米国食品医薬品局(FDA)のCDER(Center for Drug Evaluation and Research)から、品質経営成熟度プログラムに関する最新の情報を、厚生労働省からは、医薬品の品質確保に向けた取り組みについてご講演いただきます。
 また、医薬品開発におけるエンジニアリング面、新技術、データサイエンスに関しては最新の動向をご紹介いただける業界を代表する講師をお招きしています。
 また、医薬業界の継続的発展を推進すべく世界で活躍できる技術者創出のために設立された、「(一財)新製剤技術とエンジニアリング振興基金」による、「パーティクルデザイン賞受賞講演」「海外留学研究助成金目録贈呈式」、さらに恒例となりました若手研究者育成事業として若手研究者の本講演会への招待とポスター発表も行いたいと考えております。
 皆様のご参加を心よりお待ちしております。

主催 『新製剤技術とエンジニアリングを考える会』会長 竹内 洋文
共催 株式会社パウレック 代表取締役社長 長谷川 浩司

プログラム

2024年7月30日(火)

09:20~09:30

『開会の挨拶』

新製剤技術とエンジニアリングを考える会 会長
竹内 洋文
(岐阜薬科大学 名誉教授、特命教授、先進製薬プロセス工学研究室 特任教授)

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09:30~10:20 <座長> 竹内 洋文(岐阜薬科大学)

『CDERの品質経営成熟度(Quality Management Maturity)プログラムの最新情報
An Update on CDER’s Quality Management Maturity Program』

Jennifer A. Maguire
Director, CDER/OPQ/Office of Quality Surveillance, US Food and Drug Administration (FDA)
Jennifer Maguire

FDA/CDERは、製薬業界が成熟した品質経営を実践することを奨励する品質経営成熟度(QMM)プログラムを策定中である。プログラムの目的は、継続的改善を推進することによって患者の医薬品へのアクセスを改善し、それによってサプライチェーンの信頼性を向上させることである。本講演では、QMMプログラムの作成に関する最新情報を提供する。

ジェニファー・マグワイア博士は、FDA医薬品評価研究センター(CDER)医薬品品質オフィス(OPQ)の品質監視オフィス長である。このオフィスは医薬品品質監視の国際基準となることを目指しており、その使命は、製品のライフサイクル全体を通して得られた品質に関する情報を踏まえて法的措置も施行し、米国国民が高品質医薬品を入手できるようにすることである。マグワイア博士は、入局後まず後発医薬品オフィスの化学評価担当官を務め、その後新設された医薬品品質オフィスの一員となり、医薬品承認申請の工程と設備の側面の評価に関わることとなった。在任中、マグワイア博士は、質問に基づく審査(Question-based Review)、クオリティ・バイ・デザイン、ICH Q12、査察対象製造所選定モデルプログラム(Site Selection Model Program)、先進製造(Advanced Manufacturing)、品質指標(Quality Metrics)、及び品質経営成熟度(Quality Management Maturity)など、医薬品の製造及び製品品質の規制の推進を目的とした複数のイニシアチブに貢献してきた。また、PIC/S委員会にFDA代表として参加し、国際調和に重点を置いた複数の取り組みにも従事している。マグワイア博士は、バージニア大学で化学工学の学士号を、またパーデュー大学で工業及び物理薬剤学の博士号を取得。

10:20~10:40
Coffee Break (20 分)

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10:40~11:30 <座長> 野沢 健児(沢井製薬株式会社)

 『Breaking new ground beyond the “Wall of 0.05μg/m3”
~ISPE Facility of the Year Awards Category Winner 受賞を受けて~』

平澤 大介
中外製薬工業株式会社 生産技術本部デジタルエンジニアリング部 課長
平澤 大介

中外製薬工業株式会社藤枝工場が2022年に竣工した「低・中分子原薬製造棟(FJ2)」は、「2023 ISPE Facility of the Year Awards」のInnovation部門でWinnerを獲得した。この受賞は、作業者が安全に高薬理活性物質を取り扱うことを可能にする世界最高レベルの封じ込め技術を実現したことが一因となっている。この講演では、近年重要性が増してきている「封じ込め技術」について、その実現に向けた設計と検証のアプローチを解説し、同Awardへのエントリーから受賞までの一連の活動を紹介する。

2001 年 4 月中外製薬株式会社入社、合成技術研究所所属。2005 年より、活性の高い化学物質を取扱うための封じ込め設備の新規導入、製造に向けた運用策定及び、治験原薬製造を同社藤枝工場において従事。2015 年 1 月より同職において低・中分子原薬製造に関わる複数のプロジェクトに参画。

11:30~12:20 <座長> 小島 宏行(アステラス製薬株式会社)

『経口投与可能なGLP-1Rアゴニストの発見と開発|コンセプトを現実へ、そしてその先へ
Discovery and development of an orally delivered GLP-1R agonist | From concept to reality and beyond』

Stephen Timothy Buckley
Vice President, Advanced Drug Delivery, Novo Nordisk
Stephen Timothy Buckley

2型糖尿病の治療では、インスリン及びグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬などのペプチドが使用される。これらのペプチドの固有の物理化学的性質(高分子量、酵素に対する不安定性、親水性、低透過性)が経口経路によるペプチド送達の試みの妨げとなり、注射による投与が必要であった。最近、GLP-1アナログを吸収促進剤N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノカプリル酸]ナトリウム(SNAC)とともに錠剤に配合した経口セマグルチドが米国、EU、及び日本で承認され、世界初のGLP-1ペプチド錠剤となった。この配合剤は、胃において独自の部位特異的な薬物放出及び吸収を呈するとともに、溶解性、分子サイズ、及びタンパク質分解に対する不安定性に関連する固有の課題を効果的に克服して、治療上意味のある血漿中セマグルチド曝露量を達成するものである。本発表では、経口ペプチド送達における上記の科学的進歩を振り返るとともに、この分野における現在及び将来の展望について考察する。

スティーブン・T・バックリー博士は、デンマークのノボノルディスク社の先進医薬品送達担当バイスプレジデントである。リーダーとしての責任に加え、ノボノルディスク社の新規医薬品送達技術の発見と評価に携わる科学専門家の組織横断チームの責任者でもある。トリニティカレッジ・ダブリン(アイルランド)で薬学士号、同じ大学で生物薬剤学及び細胞生理学の博士号を取得。この間、南カリフォルニア大学(米国)の客員研究員も務めた。ノボノルディスク社入社前は、南デンマーク大学(デンマーク)の博士研究員であった。米国薬学会(AAPS)並びにスカンジナビア及びドイツ生理学会の賞を受賞している。査読誌(Science, Science Translational Medicine及び Nature Biotechnologyを含む)に掲載された30件を超える論文の(共同)著者であり、研究機関、国際会議及びワークショップでの招待講演も多数。

12:20~13:20
Lunch Time (60分)

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13:20~13:40
一般財団法人 新製剤技術とエンジニアリング振興基金
「パーティクルデザイン賞」授賞式 および
「海外留学研究助成金」目録贈呈式

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13:40~14:30 <座長> 竹内 洋文(岐阜薬科大学)

一般財団法人 新製剤技術とエンジニアリング振興基金
第11回パーティクルデザイン賞 受賞講演
『RNA創薬を加速する細胞内環境応答性脂質様材料ssPalmの開発』

秋田 英万
東北大学 大学院薬学研究科 教授
秋田 英万

mRNAや核酸モダリティを送達するための日本発のLNP材料として、脂質様材料(ssPalm)を開発した。様々な核酸送達用の人工脂質材料が世界中で開発されているが、『小胞膜の突破能』と『自己崩壊能』を発揮する構造を一分子内に集約しているに特長がある。本分子を進化させ、更には組み合わせる脂質の工夫を施すことで、生体免疫を制御する技術へと応用している。本発表では、これらの材料のデザインや応用について紹介したい。

1997年3月 東京大学薬学部薬学科 卒業
1999年3月 東京大学大学院薬学系研究科修士課程 修了
2002年3月 東京大学大学院薬学系研究科博士課程 修了
2002年4月 日本学術振興会特別研究員(PD) 
2002年7月 北海道大学大学院薬学研究科 助手 (2006年4月 大学院薬学研究院 助教 に配置換え)
2010年10月 北海道大学大学院薬学研究院 准教授 
2016年4月 千葉大学大学院薬学研究院 教授
2022年4月 東北大学大学院薬学研究科 教授

2007年2月 第13回コニカミノルタ画像科学奨励賞受賞
2010年5月 日本薬剤学会第25年会 奨励賞
2011年3月 平成23年度 日本薬学会 奨励賞
2013年7月 第5回日本DDS学会 奨励賞
2020年3月 令和元年度 日本薬学会 学術振興賞
2020年6月 第13回 日本DDS学会水島賞
2023年4月 令和5年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)

14:30~15:20 <座長> 池松 康之(エーザイ株式会社)

『新規モニタリング手法を使った凍結乾燥工程のスケールアップ』

横山 弘和
第一三共株式会社 製薬技術本部 製剤技術研究所 研究第一グループ 専門研究員
横山 弘和

凍結乾燥プロセスの開発において製剤の品温プロファイル等を得ることは重要であり、その手法としては従来より熱電対を用いた品温測定が多く採用されてきた。しかしながら、熱電対は設置作業が煩雑であり、特にGMP設備において庫内全体の品温プロファイルを得ることは困難である。そこで本講演では、実生産設備へのスケールアップを企図した無線式温度センサーおよびピラニー真空計よるモニタリング技術や、凍結乾燥ケーキ構造の非破壊評価といった新たな手法を活用したスケールアップ手法について紹介する。

2013年 京都大学大学院 薬学研究科 薬科学専攻 修士課程修了後、第一三共株式会社に入社。その後、現在まで一貫して製剤技術研究所にて水性注射剤および凍結乾燥製剤の処方製法設計や工業化研究、申請業務に従事。凍結乾燥製剤プロセスの設計に当たっては高生理活性物質を取り扱う研究設備の導入を担当するとともに、ワイヤレス品温センサーの開発にも携わる。

15:20~15:40
Coffee Break (20 分)

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15:40~16:30 <座長> 池松 康之(エーザイ株式会社)

『小児から高齢者までの患者のニーズを満たす最新の戦略と薬物送達技術の進歩
Latest strategies and drug delivery technology advancements meeting the needs of pediatric to geriatric patients』

Jeremy A. Bartlett
Research Fellow, Pharmaceutical Sciences/Drug Product Design, Pfizer Inc.
Jeremy A. Bartlett

患者が待っている。小児患者を考える時、この言葉がこれほどまでに意味のあるものは他にない。小児用製剤の開発には特有の課題がある。小児用製剤には、用量の高い柔軟性、味のマスキング、幅広い年齢層への受容性が求められる。本発表では、小児患者に対するこれらの課題を克服するための最新の戦略と薬物送達技術について説明することに加え、成人及び高齢患者に対して「どのように応用・適用できるか」についても説明する。また、さまざまな物理化学的特性を有する薬物に対して適用可能であり、かつ、より効率的な医薬品開発を合理化できる「薬物送達プラットフォーム」について説明する。

バートレット博士は現在、米国コネチカット州グロトンにあるファイザー社の製薬科学部門製剤設計課のリサーチフェロー兼グループリーダーである。このグループの責任は、創薬の初期開発ステージの関与から、即放出製剤に加え、モノリシック浸透圧ポンプ錠、二層錠、マトリックス錠及びマルチパーティクルなどの徐放性製剤を含む後期開発ステージの経口製剤開発まで多岐に渡る。製剤設計課では、製薬科学を適用し、臨床開発の全段階を通じて製剤設計、最適化およびスケールアップを行い、最終的には商品化に至る。
バートレット博士は、1996年にカーセッジ大学で化学の学士号を、2002年にウィスコンシン大学マディソン校で薬科学の博士号を取得し、同年、ファイザー社グロトン研究所の製剤設計課に入社した。バートレット博士の研究テーマには、小児用医薬品開発を合理化し、可能な限り効率的に新薬を小児患者に届けることが含まれる。博士のより広範なテーマには、可溶化技術、薬物送達プラットフォーム、製造科学、学術共同研究および多くの学会が含まれる。仕事以外では、バートレット博士は家族(妻や子供)、読書、旅行、野外活動などに情熱を注いでいる。

16:30~17:20 

『DXを活用した生産プロセス全体の透明化とボトルネック工程集中改善による大幅増産の実現』

藤原 英喜
武田薬品工業株式会社 グローバル マニュファクチャリング&サプライ ジャパン 光工場長
藤原 英喜

武田薬品工業の光工場は、データとデジタルの力を活用して、高品質な薬を早く患者さんに供給するための変革を推進している。近年、固形製剤の生産プロセスをリアルタイムで可視化し、ボトルネックを特定するとともに、部門間の垣根を越えたワークショップを通じて、チームの信頼関係を強化した。その結果、過去最大の生産量を達成し、市場への安定供給を実現した。この発表では、改善プロセスの詳細や具体的な成果、そして今後のビジョンについて紹介する。

武田薬品工業株式会社 Global Manufacturing&Supply Japan, Vice President 光工場長。1993年にエーザイ株式会社入社。製剤工場にてエンジニアリング、バリデーション業務を担当後、コーポレート品質部門にてGMP監査やアジア地域の品質責任者等のグローバル品質マネージメント業務に従事。2014年に武田薬品工業株式会社入社。Global Quality Japan Region Headを経て2018年より現職。タケダ・リーダーシップ・チーム (TLT)のメンバー。

17:40~19:40
交流会

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2024年7月31日(水)

9:30~10:20 <座長> 米持 悦生(国際医療福祉大学成田薬学部)

『アステラス製薬における製剤開発の変遷
 ~過去・今・そして未来を見据えて~』

小島 宏行
アステラス製薬株式会社 CMCディベロップメント 製剤研究所 研究所長
小島 宏行

製薬企業は各社の経営戦略に基づき、様々な医薬品を開発している。アステラス製薬においては、一般的な経口固形製剤の開発はもちろんであるが、それに加え、DDS技術を用いた付加価値製剤(2000年代)、開発加速化のための初期臨床簡易製剤(2000年代後半)、高薬理製剤・小児製剤(2010年代)、そして近年では抗体無菌製剤や、遺伝子・細胞含めた様々なモダリティの製剤開発に取り組んでいる。製薬業界の創薬トレンド変化に伴う弊社製剤研究所の戦略や取組みの変遷を紹介する。さらに、上記の過程で新たなCapability獲得のきっかけとなった小児製剤開発の事例として、2017年の本会でも報告したコンソーシアムパートナーと共に開発を進めている住血吸虫症に苦しむアフリカの子供たちにクスリを届けるプロジェクトのアップデートについても報告する。

2001年 岐阜薬科大学大学院 薬学研究科 博士後期課程修了 薬学博士(川島嘉明教授)
2001年 山之内製薬 創剤研究所(現アステラス製薬 製剤研究所)入社
2009-10年Scientist, Astellas Pharma Europe BV (Netherlands)
2014-16年Assistant Director, Astellas US Technologies Inc. (USA)
2017年 製剤研究所 経口剤設計研究室長
2018年 創薬技術研究所 第三研究室長
2019年 Head of Drug Product Development, Astellas Institute for Regenerative Medicine
2021年~製剤研究所長(現在に至る)
2019年~九州大学大学院 薬学研究院 客員准教授(現在に至る)
2023年~神戸大学大学院 工学研究科 客員准教授(現在に至る)

入社後一貫して、経口固形剤,経口徐放性製剤、細胞製剤含めた処方設計・製造プロセス開発・申請業務ならびにライフサイクルマネジメント、DDS製剤開発など製剤技術開発研究に従事。三度の海外駐在経験。

10:20~10:40
Coffee Break (20分)

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10:40~11:30 <座長> 柳井 薫雄(武田薬品工業株式会社)

『ナノテクノロジーが拓く未来医療:体内で薬を運び、作り、操る分子技術の開発』

片岡 一則
公益財団法人川崎市産業振興財団・ナノ医療イノベーションセンター 副理事長・センター長
片岡 一則

精密設計された分子の自己組織化に基づいて構築されるウイルスサイズのナノDDSは、低分子薬物のデリバリーにとどまらず、核酸医薬やたんぱく質などの新しいモダリティのターゲティングや画像診断のための造影剤への展開などが期待されている。本講演では、この様なナノDDSの中でも特に高分子ミセル型DDS(PM-DDS)について、その現状と将来の動向に焦点を当てて解説する。PM-DDSはブロック共重合体の自己組織化に基づいて調製され、粒径はウイルスと同等の10~100 nmスケールで、薬物を内包するコアと生体親和性を担うシェルからなる二相構造を有する事が特徴である。ここでは、低分子医薬に加えて、核酸ベースの薬物(siRNA、ASO、mRNAなど)のデリバリーのために我々が開発して来たPM-DDSに焦点を当て、特に臨床段階に進んだものについて紹介する。

1979年東京大学大学院博士課程修了(工学博士)。東京女子医科大学、東京理科大学勤務を経て、1998年より東京大学大学院工学系研究科教授。2004年より同医学系研究科教授併任。2016年東京大学名誉教授、(公財)川崎市産業振興財団副理事長・ナノ医療イノベーションセンター長。2023年より福島国際研究教育機構(F-REI)研究開発部門分野長を兼任。海外の主な職歴は、2016年より米国ノースカロライナ大学薬学部教授を兼任(至現在)。主な受賞として、米国バイオマテリアル学会賞 (2005年);NIMS Award (2009年);文部科学大臣表彰科学技術賞(2010年);フンボルト賞(2012年);江崎玲於奈賞(2012年);グーテンベルグ賞(2015年);高松宮妃癌研究基金学術賞(2017年);向井賞(2023年);Biomaterials Global Impact Award(2023年);クラリベイト引用栄誉賞(Citation Laureate)(2023年)等。2014年〜2020年日本学術会議会員。2017年に米国工学アカデミー(United States National Academy of Engineering)国際会員に選出。2018年にマインツ大学(ドイツ)名誉博士。
専門はナノ医療、バイオマテリアル、ドラッグデリバリーシステム。

11:30~12:20 <座長> 柳井 薫雄(武田薬品工業株式会社)

『Axcelead;革新的医薬品を創出するグローバルヘルスケアプラットフォーム』

池浦 義典
アクセリード株式会社 代表取締役社長
池浦 義典

アクセリード株式会社は、画期的なヘルスケアプラットフォームの提供を通じて世界中の人々の健康な未来に寄与する医薬品受託研究開発製造機関(Contract Research, Development and Manufacturing Organization:CRDMO)である。本講演では、日本の製薬業界が直面する環境変化を概説し、日本発の革新的な医薬品創出に向けた製薬業界およびバイオ産業の現状と課題について述べる。さらに、アクセリードが提供するサービス体制、独自の強み、および提供価値について詳述し、日本の製薬業界およびバイオ産業の発展に対してアクセリードが果たす役割と取り組みを紹介する。

学歴

1984年3月 京都大学 薬学部 卒業
1986年3月 京都大学大学院 薬学研究科 修士課程修了
1999年1月 同上 博士号取得

職歴

1986年4月 武田薬品工業株式会社 入社
1999年3月-2000年2月 マサチューセッツ工科大学 ポストドクトラルフェロー
2000年10月-2005年9月 武田薬品工業株式会社 医薬研究本部 化学研究所 主席研究員
2005年10月-2009年12月 同上 医薬研究本部 化学研究所 リサーチマネジャー
2010年1月-2011年3月 同上 研究戦略部 炎症疾患領域TARSTリーダー
2011年4月-2012年4月 同上 医薬研究本部 炎症疾患創薬ユニット長
2012年5月-2014年10月 同上 医薬研究本部 本部長室長
2014年11月-2017年3月 同上 医薬研究本部 湘南サイトヘッド 兼 本部長室長
2017年4月-2017年6月 同上 リサーチ パートナーシップリサーチセンター センター長
2017年7月-2023年4月 Axcelead Drug Discovery Partners株式会社 CEO兼CSO
2023年5月- アクセリード株式会社 CEO兼Axcelead Drug Discovery Partners株式会社 取締役会長
現在に至る

団体歴

2014年-2019年 日本製薬工業協会 研究開発委員会 委員長/副委員長
2014年-2019年 一般財団法人 バイオインダストリー協会 理事
2015年-2019年 Royal Science of Academy, Med. Chem. Comm. editorial board member
2016年-2018年 創薬産業構造解析コンソーシアム代表
2016年-2019年 経済産業省 産業構造審議会 バイオ小委員会 委員
2018年-2019年 経済産業省 新事業創出WG委員
2019年-2021年 特許庁 知財戦略デザイナー派遣事業委員会 委員
その他:京都大学、九州大学、大阪大学、筑波大学、上智大学、横浜薬科大学等 客員講師

12:20~13:20
Lunch Break (60分)

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13:20~14:10 <座長> 無敵 幸二(ファイザーファーマ株式会社)

『連続生産と製品リリースにおける品質と効率性の向上におけるAIの役割を探る
Exploring AI’s Role in Enhancing Quality and Efficiency in Continuous Manufacturing and Product Release』

Rupesh Malhotra
Associate Director, GMP Operational Quality Assurance, Vertex Pharmaceuticals
Rupesh Malhotra

製薬業界で連続生産が人気を集めているのは、従来のバッチ製造に対して多くの利点があるためである。連続生産の主な利点の1つは、より高い品質と効率の達成が可能なことである。AIを製造工程に取り入れることで、医薬品の連続生産における品質管理及び品質保証を改善することができる。AIは、人間のオペレーターが見逃している可能性のあるパターンや異常を検出し、重大な問題になる前に品質上の問題点を特定し、最適な結果を得るためにデータを分析してプロセスパラメータを微調整することにより、製造工程を最適化することができる。AIと他の先進技術を組み合わせることで、製造工程をリアルタイムでモニタリングと管理することが可能となり、その結果高品質な製品がより効率的かつ一貫して生産されて、最終的には患者へのより迅速な医薬品提供につながる。本発表では、現状と連続生産におけるAIの使用(低分子医薬品に焦点を当てる)、AIの使用に伴う利益と課題、製品の処分及び将来の可能性について説明する。また、AIを基盤とした新薬開発に関する現在進行中の規制イニシアチブについてもとりあげる。

ルペシュ・マルホトラ氏は、バイオテクノロジー及び製薬業界で道を究めた専門家であり、現在Vertex Pharmaceuticals社のQA業務担当アソシエイトディレクターを務めている。ボストンのノースウェスタン大学でバイオテクノロジーの修士号、並びに医薬品、生物製剤及び医療機器の薬事の修士号を取得。Vertex社での8年間にわたる在職期間中、同氏は中心的リーダーとしての役割を果たし、特に連続生産に重点を置いて、開発、臨床及び商業製造、並びに製品出荷を通じて品質基準が維持されるよう尽力している。同氏の幅広い経験は18年以上にわたり、品質のさまざまな機能領域に及んでいる。Vertex社入社前は、米国及びEU内においてさまざまな品質分野で武田薬品工業に大きく貢献した。インドのムンバイの製薬コンサルタント会社でキャリアを開始し、品質とコンプライアンスのガイダンスの提供、各国規制当局による査察の準備の支援、製薬企業のための第三者GMP監査の実施において専門知識を磨いてきた。

14:10~15:00 <座長> 無敵 幸二(ファイザーファーマ株式会社)

『年齢を問わない経口固形製剤、マイクロ錠剤およびミニ錠剤の開発フレームワーク
A framework to development of micro-tablets and mini-tablets, an age-agnostic oral solid dosage form』

Biplob Mitra
Associate Director, Drug Product Development, Bristol Myers Squibb Company
Biplob Mitra

マイクロ錠剤やミニ錠剤は、年齢を問わない経口固形製剤として近年注目されている。従来の経口製剤に対して嚥下の容易さ、用量調整の強化、固定用量配合剤など、患者中心の独自のベネフィットがある。さらに、適切な味覚マスキングを行えば、小児患者における受容性及びアドヒアランスが改善される。しかし、マイクロ錠剤及びミニ錠剤は小型であることから、その製造性にとどまらず、コーティングや投与単位への包装などの下流工程においても大きな課題が生じる可能性がある。本発表では、リスクに基づくマイクロ錠剤及びミニ錠剤の製剤開発のフレームワークを取り上げる。

ビプロブ・ミトラ博士は、米国ニュージャージー州ブリストル・マイヤーズスクイブ社の医薬品開発担当アソシエートディレクターである。同氏は、低分子医薬品開発全般に約20年の経験があるグループリーダー兼マトリクスチームリーダーである。BMS入社前は、米国インディアナ州イーライリリー・アンド・カンパニーの低分子薬開発部門の製剤処方担当サイエンティストであった。ミトラ博士は、米国インディアナ州のパーデュー大学で工業及び物理薬剤学の博士号を取得。またバングラデシュのダッカ大学で薬学士号、米国ニューヨーク州のロングアイランド大学で理学修士号を取得。患者中心の医薬品開発、並びに臨床試験及び商業化のための製剤処方及び製造工程の設計及び最適化に情熱を注いでいる。査読つき研究論文を評価の高い国際誌に多数発表するとともに、特許及び書籍の章を執筆し、多くの国際的な学術及び専門家フォーラムで発表を行ってきた。

15:00~15:10
Coffee Break (10分)

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15:10~16:00 <座長> 宮島 誠(第一三共株式会社)

『エンシトレルビル フマル酸錠の製品開発』

五味 真人
塩野義製薬株式会社 製薬技術研究本部 製剤研究所 サブグループ長
五味 真人

エンシトレルビルフマル酸錠は、世界的な脅威として人々の生活や経済活動に甚大な影響を与えた重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2 (SARS-CoV-2) 感染症の治療薬である。SARS-CoV-2感染症の早期収束のためには、本剤の早期の上市が強く望まれた。一方で,SARS-CoV-2に感染した患者様や製品を使用される医療従事者に望まれる製剤を検討し、服用性に優れる製剤設計が必要である。本発表講演では、製剤研究者の腕の見せ所となる以下の製品価値の最大化及び早期製品化に向けた取り組みについて紹介する。

2012年、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科修士課程修了。同年、塩野義製薬株式会社入社、製剤研究センター (現製剤研究所) に配属。配属後は,主に低分子の経口固形製剤の開発を担当。処方設計~工業化検討及び申請などの幅広い製剤開発業務に従事し、現在に至る。

16:00~16:50 <座長> 寺田 勝英(高崎健康福祉大学)

『薬事監視の現状と品質確保に向けた取組みについて』

藤井 大資
厚生労働省 医薬局 監視指導・麻薬対策課 課長補佐
藤井 大資

厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課は、薬事監視行政の所管課として、自治体や(独)医薬品医療機器総合機構と連携の上、医薬品の製造販売業者や製造業者等に対する監視指導を実施している。本講演においては、薬事監視行政の現状をご紹介するとともに、最近のトピックスとして、昨今の後発医薬品メーカー等の品質問題事案を取り上げ、各事案の概要やこれまでの行政の取組をご紹介する。また、現在取り組んでいる、更なる品質確保に向けた行政の取組みについても併せてご紹介したい。

平成19年 4月 厚生労働省入省(医薬食品局 監視指導・麻薬対策課)
平成21年 7月 厚生労働省 保険局 主査
平成23年 4月 医薬品・医療機器総合機構 主査
平成26年 4月 厚生労働省 大臣官房 厚生科学課 専門官
平成28年 1月 厚生労働省 医薬・生活衛生局 食品安全部 監視安全課 専門官
平成29年 9月 内閣官房 新型インフルエンザ等対策室、国際感染症対策調整室、
         新型コロナウイルス等感染症対策推進室 参事官補佐
令和 2年 7月 厚生労働省 医薬・生活衛生局 医薬安全対策課 課長補佐
令和 4年 6月 厚生労働省 医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課 課長補佐
         現在に至る

16:50~17:00
『閉会の挨拶と来年度の計画について』

寺田 勝英
高崎健康福祉大学薬学部 学部長
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